シューマン《チェロ協奏曲》《ピアノ三重奏曲第1番》─ ケラス, ファウスト & メルニコフ



ジャン=ギアン・ケラス(チェロ), イザベル・ファウスト(ヴァイオリン), アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ), パブロ・ヘラス=カサド(指揮), フライブルク・バロック・オーケストラ(管弦楽)〔KKC5618〕

ケラス、ファウスト、メルニコフが取り組むシューマン特集の第3弾は、「チェロ協奏曲」と三者全員参加の「ピアノ三重奏曲第1番」とのカップリング。この2曲の楽想の対比がよく出る録音に仕上がった。室内楽的な協奏曲と管弦楽的な三重奏曲という、ねじれた対比。両者は根の部分でつながっている。いずれも極めて精緻な造り。それを突き詰めた結果が対比的になる。精緻さを追求するには、音楽家たちが作品理解を共有することが必要。管弦楽を含めた演奏家全員で、それを分かち合っていることは、音楽的な対話のきめ細かさや、緊張と緩和の一致した移り変わりから聴き取れる。和声の思わぬ歩みを克明に追った三重奏曲第3楽章に息を飲む。

初出:音楽現代2016年9月号



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