ゲヴァントハウス管弦楽団の楽長職 -- ブロムシュテットとシャイー



 リッカルド・シャイーは2005年、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の楽長に就任した。前任者はヘルベルト・ブロムシュテット。2人の指揮者はさまざまな面で好対照をなしている。その比較から、この楽団の「次の楽長」の姿もおぼろげながら見えてくるかもしれない。
 2人の指揮者のコントラストは、我々の抱くイメージとは捻れている。ブロムシュテットは謹厳実直な、シャイーは天衣無縫な指揮をするように感じる。実のところ前者は、鷹揚で懐の深い演奏をし、後者は繊細で計算し尽くされた音楽を目指す。米国風のおおらかさと、欧州風の細やかさとの対比と言ってもよいだろう。
 一方、リハーサルの厳しさにはまた「捻れ」が生じる。前楽長が問題ありと見た楽員は、定期公演から降ろされもした。その点でブロムシュテットは、楽団トレーナーとして厳しい一面を持つ。現楽長であれば当の楽員に、「カプチーノでもごちそうしよう」と声をかけるところだ。イタリアではカプチーノは、朝の目覚ましがわり。きちんと目と耳を開いてリハーサルしよう、という指揮者一流のメッセージだろう。
 楽団の若返りと国際化、前楽長の厳しいトレーニング、現楽長の繊細な響きづくり。ライプツィヒのオーケストラ・シーンは歯車がかみ合っている。楽団とシャイーとの関係も音楽的な面はもちろん、仲間として良好だ。すでに2020年までの任期継続が決まっている。
 「鷹揚と繊細」「新大陸風旧大陸風」「厳しさと優しさ」といった対称性が、次の楽長選びにどう影響してくるか。2人が実現した楽団の技術的洗練と新しい響きの構築とに、何かを付け加える重責も新任者は負う。この街の楽長選びからはつねに、目が離せない。


【速報】アンドリス・ネルソンス、ゲヴァントハウス管 第21代カペルマイスターに!2017/18年シーズンより(2015年9月9日発表)


写真:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス


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