《ロ短調ミサ曲》私録 XI



 当方がこれまで実演に接したバッハ《ロ短調ミサ》BWV232の番付を発表するコーナーの第11回。今回の旅ではハンス=クリストフ・ラーデマン指揮、ゲッヒンガー・カントライ・シュトゥットガルト、バッハ・コレギウム・シュトゥットガルト他の演奏会に足を運んだ(ライプツィヒ・バッハ音楽祭2015千秋楽, 2015年6月21日, ライプツィヒ・トーマス教会)。
 ドレスデンパート譜を底本に据え、新たな研究成果を盛り込んだ新版総譜による演奏。「キリエ」の合唱主題のスラーや、「エト・イン・テラ・パクス」の、付点のない「ホミニブス」、「ドミネ・デウス」のロンバルディア・リズムなど、印象に残る違いも多い。学問と実践とががっちり手を結んでいるところが頼もしい。ただしこの日は、管弦楽も合唱も、この音楽祭の閉幕演奏会の水準に達していなかった。
 まあ、2010年のガーディナーの圧倒的第1位は揺るぐことはない。これはあくまで「私録」なので、ランキング内容についてのクレームはご容赦を(笑)。

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第1位 ガーディナー, モンテヴェルディ合唱団&イングリッシュ・バロック・ソロイスツ(ライプツィヒ・トーマス教会, 2010年)
第2位 ユンクヘーネル, カントゥス・ケルン(アルンシュタット・バッハ教会, 2011年)
第3位 ヘンゲルブロック, バルタザールノイマン合唱団&同アンサンブル(同トーマス教会, 2009年)
第4位 ハリー・ビケット, イングリッシュ・コンサート(同トーマス教会, 2012年)
第5位 トン・コープマン, アムステルダムバロック・オーケストラ&同合唱団(同トーマス教会, 2014年)
第6位 フェルトホーヴェン, オランダ・バッハ協会(東京オペラシティ, 2011年)
第7位 ヤコプス, バルタザール・ノイマン合唱団&ベルリン古楽アカデミー(同トーマス教会, 2011年)
第8位 アーノンクール, シェーンベルク合唱団&コンツェントゥス・ムジクス・ヴィーン(サントリーホール, 2010年)
第9位 ブロムシュテット, ゲヴァントハウス合唱団&同管弦楽団(同トーマス教会, 2005年)
第10位 ミンコフスキ, レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル=グルノーブル(ケーテン・ヤコブ教会, 2014年)
第11位 鈴木雅明, バッハ・コレギウム・ジャパンバーデン・バーデン祝祭劇場, 2012年)
第12位 エリクソン, エリクソン室内合唱団&ドロットニングホルム・バロックオーケストラ(同トーマス教会, 2004年)
第13位 へレヴェッへ, コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(ケーテン・ヤコブ教会, 2010年)
第14位 NEW! ラーデマン指揮、ゲッヒンガー・カントライ・シュトゥットガルト、バッハ・コレギウム・シュトゥットガルト(同トーマス教会, 2015年)
第15位 ブリュッヘン, 栗友会合唱団&新日本フィルすみだトリフォニーホール, 2011年)
第16位 ノリントン, RIAS室内合唱団&ブレーメン・ドイツ室内管弦楽団(同トーマス教会, 2008年)
第17位 へレヴェッへ, コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(同トーマス教会, 2003年)
第18位 ビラー, トーマス合唱団&ストラヴァガンツァ・ケルン(同トーマス教会, 2006年)
第19位 延原武春, テレマン室内合唱団&テレマン室内オーケストラ(いずみホール, 2011年)
第20位 シュミット=ガーデン, テルツ少年合唱団&コンツェルトケルン(同トーマス教会, 2007年)
第21位 ビラー, トーマス合唱団&フライブルクバロック・オーケストラ(同トーマス教会, 2013年)

問題外 コルボ, ローザンヌ声楽アンサンブル&同器楽アンサンブル(東京国際フォーラム, 2009年)←ここに並べるのがはばかられるほどひどく、内実のない演奏。コルボの「バッハに対する無理解/不勉強」が白日の下にさらされた。どういうわけか日本でだけもてはやされている。アンスバッハ、ケーテン、ライプツィヒの主要なバッハ音楽祭に彼らが呼ばれないことをもう少し冷静に見つめてはいかがか。


写真:拍手に答えるラーデマン他(2015年6月21日, ライプツィヒ・トーマス教会)


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