永遠のカノン − 山岡重治&太田光子(リコーダー) 



「永遠のカノン」クヴァンツ《二本のリコーダーのための六つのデュエット》作品2▼山岡重治(リコーダー), 太田光子(リコーダー)〔MH3040〕

1750年代のベルリンでは、音楽の理論と実践とが手を取り合っていた。エマヌエル・バッハの『クラヴィーア奏法試論』、マールプルクの『フーガ論』など多くの理論書が生み出される。その嚆矢となったのがクヴァンツの『フルート奏法試論』(1752年)だ。59年の作品2もまた、この理論と実践の融合の、実践側の成果と言えよう。音量変化が音色変化と結びつくことで、音量ツマミをひねるだけのダイナミクスには終わらない、精妙なコントラストを描き出す。奏者は2人でも、一人二役をこなせば「音楽の対話」の登場人物は4人。そうした重層性も楽しい。『試論』の指示を元に装飾を施すあたりに、作曲家への敬意がほの見える。

初出:音楽現代 2015年3月号


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