ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル



 アヴデーエワショパンコンクール後4年間の成果を問う。
 フルートやオーボエファゴットやホルン、チェロやコントラバスの音色が、ピアノの各音域から聴こえる。音色の変化は緊張と緩和の交代、強弱による迫力作りと結びつけられる。考え抜かれた句読点や種類の豊富な子音が、音楽のおしゃべりを盛り立て、正確な左手と自由に振舞う右手とが、聴き手の時間感覚を心地よくくすぐる。
 アヴデーエワは自らのこうした特質を、前半のモーツァルトソナタ第6番》でひとつひとつ明らかにしていった。さらに、続くヴェルディ/リストのオペラ《アイーダ》「神前の踊りと終幕の二重唱」では、ピアノから管弦楽と2人分の声とを引き出すのだから恐れ入る。
 こうして前半、聴衆は「アヴデーエワの音楽」が作り上げられていく様子を、胸を高鳴らせつつ疑似体験した。後半、ショパンの《24の前奏曲》がその興奮の粗熱を取る。会場全体がアヴデーエワの術中にはまった一夜。(2014年11月14日 東京オペラシティ

初出:音楽現代 2015年1月号


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