「ヴィヴァルディ ピエタ − 聖なるアリア集」− ジャルスキー


フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー&指揮), アンサンブル・アルタセルセ(管弦楽)〔WPCS12884〕

いっとき万能細胞が話題になったが、万能な声があるとしたらそれは、ジャルスキーカウンターテナーのことを指すのだろう。ただ彼の歌声は必ずしも「七色」ではない。むしろ微細な変化の内に情緒の全てを表現し尽くそうとする。それが「万能性」の源泉だ。その精妙さにアンテナが反応すれば、この音盤は「無人島の1枚」になりうる。《スターバト・マーテル》の「さあ聖母よ」にみる緊張感の細やかな変化は、「あなたの悲しみを感じさせたまえ」と祈る声にふさわしい。こうした音楽には優れた通奏低音管弦楽との出会いが実に重要。「遠く退くがいい」では管弦楽が、詩の情緒を見事に増幅している。録音場所であるパリ "レバノンの聖母教会"の響きも楽しみたい。



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