モーツァルト 後期三大交響曲(ブリュッヘン&18世紀オーケストラ)



フランス・ブリュッヘン(指揮), 18世紀オーケストラ(管弦楽)〔OGCD921119〕

2010年にロッテルダムで行われた演奏会のライブ録音。できれば時間をとって、3つの交響曲を通して聴いていただきたい。モーツァルトは最後の交響曲3作を、出版ないし上演のためのセットとして構想した。だからこの3曲は、多様な内容ながら連作の性質をも併せ持つ。ブリュッヘンは当盤で、この多様性と連作性という相反する課題に取り組んだ。楽器編成や調は3曲でまちまち。それが異なる手触りを生む。ブリュッヘンは一貫してバランスを低弦に寄せ、重心を低めに取る。「異なる手触り」を「一貫したバランス」の上に展開することで、多様性と連作性とを両立させた。滑舌の良さと息の長さも健在。推進力の強さに時間を忘れる。

初出:音楽現代 2014年12月号

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