ハイドンと18世紀を彩った鍵盤楽器たち ― 山名敏之(古典鍵盤楽器)



ハイドンと18世紀を彩った鍵盤楽器たち 山名敏之(フォルテピアノ, クラヴィコード, チェンバロ)〔ALCD-9138〕

読者には、このCDの封を開けたらただちにトラック1、5、9を聴き比べられたい。というのもこれらが、同じ曲を3つの異なる古典鍵盤楽器で弾いた「比較トラック」だから。音域による音色差が魅力のフォルテピアノ、揺らぎやずらしによる声部処理が身上のチェンバロ、細やかな子音づくりに長けたクラヴィコード。同じ曲の演奏を通して、それぞれの音色的操作、時間的操作、発音的操作が、音楽に不可欠の「言葉遣い」として聴こえてくる。もうひとつ楽しんでいただきたいのは♯1つの調と♭3つの調との対比。うなりの多寡による調のコントラストは、不等分音律の際立った特徴だ。古典鍵盤楽器に触れてこそ立ち現れる世界を聴き手も疑似体験できる。

初出:音楽現代 2014年6月号


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