ミクローシュ・ペレーニ チェロリサイタル



 ハンガリーを代表するチェロ奏者が、ピアニストの息子ベンジャミンを連れて来日。2夜に渡るリサイタルを催した。その第1日を聴く。前半にバッハ、ブリテン無伴奏曲、後半にはリスト、ヤナーチェクブラームスと伴奏の付く曲が並んだ。
 バッハの第3組曲、寛いだ気分が身上のアレマンドで凸凹の運び。2声部の旋律を、起伏ある単声部としてレガート奏法に押し込むため。フレーズの長さは18世紀音楽にそぐわない。一方、非凡なのは音域による音色差と、上下弓の力動性の違い。前者がクーラントに色彩を与え、後者がサラバンドから舞曲の興趣を引き出す。
 こうした流れは後半にいたってよりはっきりと表れた。リスト(ラントシュ編)「メフィストワルツ第2番」では、チェロの高音域に管楽器、ピアノの右手も同じく管楽器、左手には低弦の音色が聴こえる。それらが交錯して「おしゃべり」をあぶり出す。弓の力動が3拍子の推進力を支え、ピアノもその力動を模す。「音楽の対話とはかくあるべし」と感じ入った次第。(2014年3月7日 浜離宮朝日ホール


初出:音楽現代 2014年5月号

.