パッヘルベル《恋人のため息》― 櫻田亨(リュート)



パッヘルベル《恋人のため息》― 櫻田亨(リュート)〔Nostalgia1203〕

櫻田亨が11コース(ただし9組の複弦があるので20弦)の楽器で、17・8世紀のリュート音楽を奏でる。17世紀以降、フランスで発達したリュート奏法は、バロック期の鍵盤音楽のお手本にもなった。その柱は「自由さ」と「多声部表現」の両立だ。はらりとほどかれる音の束。それが横に連なると、3人4人のおしゃべりが聴こえてくる。この横への複線意識は、音域によって音色が異なるリュートの持ち味が醸し出すもの。もちろん演奏者・櫻田の、ひとりで何役もこなす「役者ぶり」も堂に入ったもの。眉間にしわを寄せて聞き耳を立てなくても、自然と立体的な「音楽の対話」が聴こえてくる。親密な楽器の親密な響きを伝える録音にも好感。


初出:音楽現代 2014年5月号


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