インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル〈ICE〉



 同時代音楽を専門とするニューヨークのアンサンブルが、ナタン・デイヴィス、ポーリン・オリヴェロス、ジョン・ゾーン、そして藤倉大の作品を紹介。後半の始めには、福島県相馬市の作曲教室に参加した子供たちの曲が披露された。
 人間の耳は、ロングトーンの出だしと終わりとを取り除いて聞かされると、何の音なのかうまく判断ができないらしい。つまり楽器にせよ声にせよ、出だしの「雑音」、つまり「子音」こそがその個性を決定づけている。「子音」はまた、音楽の対話を実現するためにもっとも重要なツールでもある。
 ゾーンの「テンペスト」や藤倉の「ミニーナ」は、こうした楽器特有の「子音」と、それがもたらす「対話」の興趣を全面に押し出していて、それが自然な興奮を誘う。この興奮はバロック音楽で得る感触によく似ている。とりわけ「テンペスト」は、18世紀のトリオソナタ書法に重なるような運び。バロック来の丁々発止のやり取りが、同時代音楽として結実した。大きな拍手を送りたい。(2014年2月25日 白寿ホール)


初出:モーストリー・クラシック 2014年5月号

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