ダニエル・ホープ ― 禁じられた音楽



 英国のヴァイオリン奏者ダニエル・ホープが、ユダヤ系作曲家の作品を中心に取り上げてリサイタル。ドイツのピアノ奏者セバスティアン・クナウアーが共演した。
 シュルホフやダウバーら、反ユダヤ主義の波間に埋もれた音楽家の作品が当夜のテーマ性を色濃く反映する。興味深かったのはアルヴォ・ペルトの「フラトレス」。ホープの希望で急遽、演目に加わった。「司祭見習い」を意味するタイトルのこの曲は、冒頭6小節の主題を変化させていく変奏曲。ユダヤ系のたどらざるを得なかった流転を、ホープが楽曲のスタイルに託しているようにも思える。そうした思い入れとは裏腹に、演奏は醒めた運び。それが一層、変奏曲の流転するさまを深く彫琢する。
 ガーシュウィンの舞台作品のナンバーを、ヴァイオリンとピアノとで披露して演奏会はお開き。両大戦間の実験的な音楽から二次大戦後のミュージカルまで、ユダヤ系音楽家ユダヤ文化が西欧世界にもたらした果実を一覧する稀有な一夜。(2013年10月15日 トッパンホール)


初出:モーストリー・クラシック 2014年1月号

.