ヒルデガルト・フォン・ビンゲン『セクエンツィアとヒムヌス集』



エマ・カークビー(ソプラノ), クリストファー・ペイジ(ディレクター), ゴシック・ヴォイセズ 〔CDA 30009〕

中世のベネディクト会修道女にして、歴史に名を残す最初の女性作曲家、ヒルデガルトの作品を集めた1枚。セクエンツィアはミサで、イムヌスは聖務日課で歌われた聖歌だ。これらはヒルデガルトの《天啓の調和的響き》から選び出されている。ディレクターのペイジが、ドイツ・ヘッセン州立図書館の手稿資料に基づいて自ら楽譜を校訂した。カークビーの先唱に導かれ、女声だけで歌われるいくつかの曲には、当時の女子修道院のお勤めもかくや、と思わせる力がある。それは発声が19世紀以降の声楽とは根本的に異なっているから。カークビーは聖歌の先唱者というだけでなく、時代を画する古楽唱法の先導者でもあったことを改めて確認した次第。


初出:音楽現代 2014年1月号

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