読売日本交響楽団 第158回芸劇マチネーシリーズ ― カンブルランの「春」
2013年9月8日(日)東京芸術劇場
シルヴァン・カンブルラン(指揮), 読売日本交響楽団
楽団の常任指揮者が、夏の終わりに春の風を届ける。演目はドビュッシーの《春のロンド》、シューマンの交響曲第1番《春》、ストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》。お得意のドビュッシーや、メインの《春の祭典》を差し置いてこの日、指揮者の仕事がもっとも輝いたのはシューマンの《春》だ。
シューマンは、少なくとも音楽的には、性格がしつこい。そのしつこさは、音楽の最前面ではなく隠れた声部で受け渡されていく。しつこさがしつこさとして表現されるためには、目立たないパートでもつぶさに聴こえなければならない。しかし、しつこさ一辺倒では飽きる。それを解決するには音楽の緊張と緩和とがはっきりと描き分けられなければならない。
シューマンの作品の持つ難しさを、指揮者と楽団は上に書いた通り解決していく。たやすくそうしているように聴こえるけれど、実はとても高度なこと。シューマンにこそ両者の職人技が色濃くにじむ。
初出:月刊ピアノ 2013年11月号
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