もうひとつの「オランダ人」― ミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル



 6月1日、ウィーンのコンツェルトハウスで、ディーチュの「幽霊船」(1842年)とワーグナーの「さまよえるオランダ人」(第2稿、1841年春)とを1日で上演するコンサートが開かれた(演奏会形式)。同ホールの国際音楽祭の一環。合唱はエストニアフィルハーモニー室内合唱団、管弦楽マルク・ミンコフスキ指揮、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブルが担当した。
 「もうひとつの『オランダ人』」とは?フランス人作曲家ピエール=ルイ・ディーチュ(1808-1865)は1840年ワーグナーの台本「さまよえるオランダ人」(第1稿, 仏語)を500フランで買い取る。その台本に曲を付け1842年、「幽霊船」の外題のもとオペラ座で初演を果たした。いっぽうワーグナーは、ディーチュから受け取った500フランでピアノを借り、自らの「さまよえるオランダ人」(第2稿, 独語)を作曲、といった経緯。
 この2つのオペラを1日で上演してしまおうというのが今回の演奏会。ワーグナーの生誕百周年を祝う公演の中でも異色の催しと相成った。詳細は今月発売の「モーストリー・クラシック」にて。乞う御高覧。


【コンツェルトハウス国際音楽祭】
2013年6月1日(土)ウィーン・コンツェルトハウス
ディーチュ《幽霊船》, ワーグナーさまよえるオランダ人》〔演奏会形式〕
サリー・マシューズ(ソプラノ), エフゲニー・ニキティン(バリトン), インゲラ・ブリムベルク(ソプラノ), ミカ・カレス(バス)ほか, エストニアフィルハーモニー室内合唱団, ミンコフスキ指揮、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル


写真:拍手に応えるミンコフスキ(2013年6月1日, ウィーン・コンツェルトハウス)