狂言風オペラ『魔笛』



2011年10月26日(水) 新国立劇場 中劇場

 モーツァルトの「魔笛」を狂言風に仕立てた2幕の舞台作品。音楽は管楽八重奏の編成に編曲されている。ドイツの民衆音楽劇・ジングシュピールと、日本の滑稽劇・狂言の親和性が高いことは想像に難くない。当夜はその予想を遥かに超え、客席の笑いを大いに誘う爆笑劇となった。
 狂言風オペラと銘打っているが、その実態はシカネーダ台本の狂言魔笛」に、西洋楽器の囃子方を付けたもの。そうすると設定も滑稽味を前面に押し出したものとなる。
 昼の教祖=ザラストロ(丸石やすし)はストーカー、夜の女王(茂山逸平)はSM嬢、王子=タミーノ(茂山童司)は世間知らず、太郎=パパゲーノ(茂山正邦)は怠惰といった具合で、それを音の霊(豊嶋晃嗣)が音楽療法で治療する。
 終曲で、囃子方の西洋楽器(ドイツ・カンマーフィル管楽ゾリステン)と唯一の邦楽器・鼓(中村寿慶)とが共に演奏を行うことで、日月一双を統合してみせたのは象徴的。日独交流150周年を言祝ぐに相応しい幕切れである。

初出:モーストリークラシック 2012年1月号