旧東ドイツ建築に住んでみる(2)


 螺旋階段は昇降に必要なスペースを小さくする上、意匠も美しいので、古来多くの建築に用いられています。螺旋状(円・楕円・正方形など)に階段が配置され、軸線を支柱が貫く構造が普通ですが、軸に支柱がなく上下階が見渡せるタイプのものも(たとえば、ヴァイマルバウハウス大学本館)。
 その螺旋階段の軸にあたる空間にエレベーターを配置したのが、現在滞在しているアパートの階段室です。エレベーターには2つの扉があり、地上階のエントランスでは西側、住居がある各階では東側の扉が開きます。
 この階段とエレベーターはなかなか合理的で感心しています。というのも、螺旋階段のデッドスペースを活用している上、エレベーターに乗り込んでから降りるまでの導線が一直線だから。扉が1つのエレベーターは乗り込んだらクルリとターンをしなければなりませんが、扉が向かい合わせに2つあるエレベーターは乗り込んだ順に奥に進めば、その順番を維持したまま降りることができます(ただしその便利さは、外出時のみ有効)。
 エレベーターの機械類は1996年に新調されていますが、システム自体は1960年代の竣工時からのオリジナル。簡単な仕組みですが、その後40年以上に渡って住みやすさを担保するわけですから、重要な一工夫に違いありません。


写真:アパートの階段室(ライプツィヒ・帝国通り)