旧東ドイツ建築に住んでみる(1)


 ヨーロッパでアパートメントやフラットを借りるとなると、19世紀までに建てられた旧建築(Altbau)がよいですよね。凝った意匠の外観、天井の高い室内、ゆったりとした間取り。たいがいは現代の生活様式向けにリノベートされていますから快適です。
 そこをあえて新建築(Neubau)、つまり冷戦期に建てられたアパートを借りて生活しています。ここライプツィヒは旧東独地区ですから当然、東欧共産圏建築のお手本のような共同住宅。もちろん室内は改装されていますから快適ですが、基本的な作りは「壁崩壊」前の香りがぷんぷんします。何度かに分けて、そんなDDR(旧東独)の残滓を愛でてみましょう。
 まずは外観のご紹介。部首の「くにがまえ」ように中庭を囲む集合住宅は、地上6階(一部7階)・地下2階。地上階は店舗とピロティーで、中庭へのアクセスは誰でも可能です。外観は階段室の連続水平窓が特徴的。戸別の窓は2つおきに足下まであり、水平方向へのリズムを作っています。6階は屋根裏部屋(Dachgeschoss)で、外観上は暖色の帯が鉢巻き状に連続して最上階の目印となっています。部屋は通り側だけでなく中庭側にもあります。間取りは数種類あるようで、単身から子供がいる家族まで対応できる模様。
 暖色の帯の意匠が旧共産圏風に思えますがいかがでしょうか?階段室の連続水平窓は、デッサウのバウハウス校舎や教授用住宅にそっくり。ドイツ近代デザインの常套手段とでも言えましょうか。


写真:ライプツィヒ・帝国通りのアパート