バウハウスはヴァイマルからはじまった

 中部ドイツ・ハレに滞在中の6月9日、チューリンゲンのヴァイマルに足を延ばし、街を挙げて行われている大規模なバウハウス展に出かけました。デッサウでのバウハウス建築めぐりとあわせ、バウハウスの旅の重要なイヴェントです。2007年にカッセル・ドクメンタミュンスター彫刻プロジェクトをめぐって以来、今回が2度目の個人的アート・ツアーとなりました。
 ヴァイマルは古典主義の都として世界遺産に登録されていて、ゲーテやシラーの住んだ街として有名です。その他、リストが楽長をしたり、われらがバッハも重要なキャリアをこの地で築きました(残念ながらヴァイマルは観光資源としてのバッハにはあまり関心がないようです)。
 そんなヴァイマルは、20世紀のアートシーンと工業デザインに大きな影響を与えた工芸学校・バウハウスが生まれたところ。今年、創立90周年を迎えたバウハウスの足跡を、生まれ故郷であるヴァイマルが満を持して回顧します。会期は4月1日から7月5日まで。バウハウス博物館をはじめ、ヴァイマル市内の新美術館、シラー・ハウス、ゲーテ博物館で展示が行われ、街全体が展覧会場と化しています。さらに、バウハウスの名前を冠した学校、ヴァイマルバウハウス大学主催の建築ツアーも用意され、総合的にバウハウス・ムーブメントを体験することができる趣向です。ファンにはたまりませんね。
 午前10時、新美術館のオープンとともに入場し、まずはバウハウス・カードを作ります。これはヴァイマルの各展覧会場用のフリーパスで、クレジットカード風のしっかりしたもの。これだけでもよい記念になります。新美術館は、従来バウハウス博物館に所蔵されている品物に加えて、ドイツ各地に散らばる関連作品を集めた意欲的な展示。とりわけ、テーブルウェアの大コレクションには目を奪われました。
 次に向かったのはシラー・ハウス。詩人で劇作家のシラーが暮らした住居が現在は博物館になっています。その2,3階には、バウハウスと上演作品との関連を示す多くの資料が展示してあります。シュレンマーらによる身体表現もバウハウスの重要な仕事だったことが思い出されます。
 ゲーテ博物館には、色彩の研究に関する膨大な資料が並びます。ゲーテは『色彩論』(日本語で読めます!)でも有名で、彼の考え方とバウハウスの色彩論を比較できるように展示が工夫されています。
 その後、バウハウス大学の本校舎に向かい建築ツアーに参加。当大学の学生の案内で校舎をめぐります。クライマックスはグロピウスが執務した校長室。部屋をわざわざ立方体に区切って配置した部屋で、家具も正方形への「オマージュ」が基本とのこと。ツアーに参加しないと入れないので、貴重な体験です。
 公園の木立にたたずむ実験住宅ハウス・アム・ホルンの見学を終えたのが、おおよそ午後5時。夏のドイツはまだまだ日が高いのですが、そろそろ展覧会もおしまいの時間が近づいています。急ぎ旧市街に戻り、400頁弱の大部なカタログ(35ユーロ)と各種記念の品物を購入して悦に入ります。帰りはドイツ鉄道の心地よい振動とすがすがしい疲れに誘われ、ぐっすりと眠ってハレに到着。到着時間の関係で演奏会をひとつパスしてしまったことはご愛嬌です。

写真:展覧会場のひとつ、ヴァイマル新美術館