ライプツィヒ・バッハ音楽祭 (10)


6月18・20日、バッハ舎利


 バッハの足跡やご当地オルガンをめぐるバスツアーは人気のプログラムの1つ。今回は、生まれ故郷のアイゼナハ(18日)、生涯に2度奉職したヴァイマール(20日)へと出掛けました。
 アイゼナハの見所はなんといってもバッハ博物館でしょう。企画展示は「バッハの死因と頭部復元」。しばらく前に話題になった、あの「いかつい顔」の復元です。バッハの頭蓋骨の模型、右半分頭部・左半分頭蓋骨のハーフ&ハーフ模型、われわれのよく知る胸像の3つが並べられ、比較できるようになっています。仏舎利ならぬ「バッハの舎利」を拝みにきたようなものです。同じ部屋にはバッハの死因の1つと言われる「18世紀眼科手術の詳細」と「頭部復元のくわしい方法」を示すパネルが掛けられ、まるで「バッハ解剖学教室」のよう。微に入り細を穿つ展示には、良くも悪くも、ドイツらしさがありありと出ているような気がします。
 アイゼナハでもうひとつ足を運ぶならゲオルク教会。ヴァグナーファンの方はヴァルトブルクとおっしゃるところですが、バッハファンの方はこちらへどうぞ。もちろん余裕があればどちらにも足を運んで下さい。さて、ゲオルク教会はバッハが洗礼を受けた場所。少年ルターが聖体拝領(ミサの中心的な儀式)に与っていたのもここです。祭壇前にはバッハが受洗した洗礼盤。これを眺めながら、額にびちゃびちゃと水をかけられ泣きわめくバッハの様子を想像してしまうのは、行き過ぎでしょうか。
 一方、20日に足を伸ばしたヴァイマールに残るのが、バッハの長男ヴィルヘルム・フリーデマン、次男カール・フィリップ・エマニエルが受洗したペーター・パウル教会(市教会、ヘルダー教会)。ゲオルク教会同様、子供たちが洗礼に与った洗礼盤もしっかりと保存されています。その他、ヴァイマールもバッハ史跡に事欠きません。時刻を知らせる城の鐘も、当時の響きを残しているとのこと。サウンドスケープの点でも往時をしのぶことができます。
 アイゼナハ、ヴァイマールともに、ドイツ版新幹線 ICE が停まります。フランクフルト(アム・マイン)から鉄道でライプツィヒに向かいつつ、アイゼナハやヴァイマールで途中下車する旅などいかがでしょうか。バッハ音楽祭のバスツアーとして訪れれば、ガイドや演奏会までつく豪華版。気ままに個人旅行、特典付きバスツアー、もちろんどちらもお勧めです。


写真:バッハの頭部模型(アイゼナハ・バッハ博物館)