バッハ新発見の基礎知識 (2)


 新たに発見されたバッハの真作、コラール・ファンタジー(オルガン曲) <主なる神、我らの側(かたえ)にいまさずして Wo Gott der Herr nicht bei uns haelt> BWV1128 。「ニュースが分かる基礎知識」コーナー第2回目です。新発見のニュースは2008-04-16をご覧下さい。
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[3] <主なる神、我らの側にいまさずして>は一部現存していた?
このたび発見されたコラール・ファンタジー<主なる神、我らの側にいまさずして>は、5小節のみが伝えられていた。この断片は、『バッハ作品目録』の「真正性については疑わしい諸作品」の部に「Anh.II 71」として分類されている。
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[4] ヴィルヘルム・ルストとは?
 ヴィルヘルム・ルスト [Wilhelm Rust, 1822-92]:ドイツの音楽家一族、ルスト家に生まれる(ヴィルヘルムの祖父、フリードリヒ・ヴィルヘルム[1739-96]はC・P・Eバッハらに師事、デッサウの宮廷楽長を務めた)。1853年に旧『バッハ全集』のベルリン駐在編纂者となる。1858年からは主幹編纂者。1878年ライプツィヒ・トーマス教会オルガニストとなり、1880年に同教会のカントル(音楽責任者)に就任した。カントル就任後ほどなくして旧『バッハ全集』の編纂から退く。バッハ学者シュピッタとの確執が原因と考えられている。
 今回、ヴィルヘルムの遺品の中からコラール・ファンタジーの筆写譜が発見されたが、当該の楽譜が21世紀になってようやく日の目を見たのも、以上のような経緯があってのことではなかろうか(意に反して『バッハ全集』の編纂から遠ざけられたため、意趣返しとして当該作を公表しなかった、というのは酌み過ぎか)。 
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つづく

写真:市場・聖母教会(ハレ)